強い言葉とは。

 

もうここ2年くらい気にしているトピックが”言葉”。

言葉って本当に面白くて、言い方によって相手に伝わる印象が本当に変わる。

「君が好きだ」って言葉はストレートで、気持ちの真っ直ぐさが伝わる。

「君の瞳に恋してる」なら、その部分に特別感情を抱いている気持ちが見て取れる。

というように一つの感情を伝えるのに様々な通り道が存在しているのが言葉で、そんな言葉の多様性に、常日頃僕は魅せられているわけです。

 

そんなある日、というか4月に入って言葉について気がついたことがあって、それが今回のエントリーのテーマ。

それは「言葉の強さ」

言葉に強いも弱いもある?って思うけど、刺さる言葉とか忘れられない言葉って誰しもあると思う。

僕なら映画監督のマーティンスコセッシが2014年のニューヨーク大学卒業スピーチで言った

「Everyday is a Rededication (毎日が創造活動のチャンスだ)」

という言葉。

 

Martin Scorsese - Honored Speaker at Tisch Salute 2014 from Tisch School of the Arts on Vimeo.

これは本に文字起こしされるくらい有名なスピーチなので、一度英語の勉強がてら見てみるといいかもしれない。ぶっ飛ぶ。

そういうように、言葉のツヤとか、目立ち具合ってやっぱり多少あって、一言でポーンって放った言葉が人の心に深く突き刺さることってある。

そんな中で僕自身が感じていたことは

「強い言葉はネガティブな感情から生まれるのではないか?」

ということ。

確かにマーティンスコセッシは順風満帆な映画監督人生ではない。このスピーチでもスポンサーが取れなくて苦しんだ話をしていたから、やっぱり映画を楽しんで撮っているだけではないんんだろうということは想像がつく。

ネガティブな感情っていうのは基本的にコンプレックスや嫌な思い出とかからくるもので、案外そういうのって好転しないもの。だからこそ、ネガティブのパワーっていうのは中々落ちていかないんだろう。それがゆえに、ポジティブな感情と比べた時に、ネガティブな感情っていうのは パワーの面で勝っていくし、結論感情の表現として長けている言葉という存在は、ネガティブに裏付けされると、とても強くなる。

けれど、強い言葉がネガティブな感情を秘めているなら、広告のコピーはどうなんだろう。そんな思いの中で読んだ本があった。

広告をナメたらアカンよ。

広告をナメたらアカンよ。

 

この本、ただの広告の本ではない。なんというか今までにあった有名な広告がどのように作られて、どのような時代背景を投影したものなのかを筆者が考察し、実際に作った張本人が少しだけネタバラシをするという本。この中で僕の考えていたことが全く裏付けされなくなってしまうようなコピーライターがいる。

それが眞木準という今は亡きコピーライターだ。

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全て眞木準のコピー。

特に刺さるのは

"四十才は二度目のハタチ。"

という言葉。このコピーで当時中年のオシャレ意識が向上し、伊勢丹の売り上げは大きく伸びたらしい。

本題に戻ると、眞木準のコピーはかなりポジティブな印象を受ける。

ホンダを買うボーイ

もそうだけれど、オシャレなダジャレのようでネガティヴなイメージをまったく感じさせない。のに強い。

 

やっぱりネガティヴだけが強い言葉を作るっていうのは誤解だったのかなーと思った時、学校の元コピーライターの先生との話で衝撃を受けた。

コピーの受賞歴もあるその先生が、受賞した時のコピーについて話していた時のこと。

どうしてそのコピーができたかという話で、その先生は

「当時の若い男女の恋愛にムカついてた」

と話したのだ。驚いた。恋愛のコピーを書くような人ではないイメージ(失礼)だったので、尚更だった。

先生は、そこからコピーにしていくときに、自分の思っていることをポジティブシフトさせていくらしいのだ。

ポジティブシフトをどれだけ上手くキメられるか。それがプロの腕の見せどころなようだ。

その話を裏付けるように、とある古本を読んでいるとき、眞木準のコラムが載っていた。

そこで彼はこう書いていた。

世の中に簡単に作れるものなんてない。

コピーは、孤独から生まれる。明るい言葉をつかもうとする人間の顔は、逆に暗い。「トースト娘ができあがる。」は、地下鉄のホームで線路の闇を見つめている眼底に浮かび上がった。

なるほど、明るくて強い言葉は元々明るくないってことなのか。オシャレなダジャレは心の暗がりから浮かび上がっているんだな。誰しもあるだろうネガティヴな感情をポジティブに吐き出せたらさぞかし楽しいだろうなあ。

僕も人の心に突き刺さるポジティブシフトを決めてみたい、強い言葉を吐き出したい、そう思った。